ターナーギャラリー( 東京・豊島区) では、t h e f a s c i s m [ 小田島等 長尾謙一郎] 個展
「Meltdown Expressionism」を開催致します。the fascism の初めての展覧会となる本展では
ペインティング約30 点を展示いたします。
▪️ステートメント
the fascism は、デザイナーの小田島等と、漫画家の長尾謙一郎が東京で結成したユニットだ。2014 年12 月に『季刊S 』誌上※ で画家宣言した二人は、翌年からペインティングの共作とシンセサイザーによるバンド活動を展開。二人の間で起こる対立や妥協、和解、推敲といった理性的行為は、この共作が「社会」と合わせ鏡であることを示している。それらは単なるコラボレーションにとどまらず、互いに異なる分野で自立する個性を衝突/ 溶解させて、独善化しない別次の個性を発見しようとする、共作を打ち破る行為だ。今回の展覧会は、311 以降進行する、あらゆる事物の境界のゆらぎと溶解を、二人の作家の関係を溶解させて描くペインティングによって捉えようとする試みだ。政治やマスメディアと人々、現実と虚構、善と悪、性差、自然とテクノロジー、混沌と秩序そして美術とその周辺――それらは人間の想像や制御を上回り、認識することがますます難しくなってきている。そうした領域に、彼らはシュルレアリスムの方法論によって深く切り込み、そこでえぐり取ったイメージを自身の想像力と意識を通過させて平面上に置き換えていく。少なくともペインティングは、二人にとってあらゆる事物をコントロールし、主権的でいられる場だ。そこで行われる、言語(=人間)を超える表現の限界的過程は、芸術の可能性や私たちの現実味、生きているという今を感じさせるものだ。
※ 小田島等 × 長尾謙一郎「 直感通信-vol.15」『 季刊 S』 第 49 号 飛鳥新社 2014 年 12 月
(美術批評家 鈴木寛和)